はじめに

心理的問題を抱えたがん患者に対して、さまざまな種類の心理療法・心理学的介入方法が用いられ、またその効果について検討され、QOLの向上については一定した結果が得られるようになってきました。

しかし、現在の我が国のがん医療での精神的サポート体制の現状では、時間的、人的制約、前述した患者のもつ現実的問題を取り扱う必要性、薬物療法に対する抵抗などがあります。よって、短時間で実施可能で、患者の現実的問題を取り扱え、比較的簡単なトレーニングで介入の実施者を養成でき、有効である、構造化された介入方法の開発が期待されています。

そのような条件を満たす可能性のある介入法として、認知行動療法の一つの技法である問題解決療法(problem-solving therapy)があげられます。

海外ではがん患者に対して応用されその有効性が検討されています。また日本においても厚生労働省科学研究費補助金「がん患者に対するリエゾン的介入や認知行動療法的アプローチ等の精神医学的な介入の有用性に関する研究」班(明智班)において我が国のがん患者に対して有効な問題解決療法プログラムの作成が行われました。

そこで本ページでは、研究班の開発した「日本人がん患者に対する問題解決療法 (Problem-solving therapy for the Japanese cancer: PST-JC)」について、簡単にご紹介し、研究班が作成した実施マニュアル(PDFファイル)を心理学の専門家・医療従者の方へ配布しています。